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2020/10/08

メールの置き場のそもそも論


 パソコンやスマホが大事にされるのは、かけがえのないデータがその中に入っていると思い込まれているからだ。でもそうじゃないことは多い。なぜならデータが置かれているのはクラウドだからだ。


メール今昔

 昔と違ってメールメッセージや各種データは、手元で後生大事に保管するものではなくなりつつある。利用されるメールサービスに届いたメールはメールサーバーに置きっぱなしだし、端末で撮影した写真は全部クラウドにアップロードされる。パソコンやスマホにあるのはコピー後のものだ。デジタルだからコピーしても劣化はない。結果としてクラウドと端末には同じものが存在することになる。写真が撮影されたり、予定が端末で書き込まれたりすれば、そのコピーがそのままクラウドにも書き込まれて同一に保たれる。

 昔は、POPと呼ばれる方法で届いたメールを端末にダウンロードしていた。ちょうど集合住宅の集合郵便箱のようなものに配達される郵便と同じで、そこから取り出した郵便物は、当然、郵便箱からなくなる。そうすると、あるパソコンで取り出したメールを、別のパソコンやスマホから読もうとしても、サーバーにはすでにメールが存在しない。それでは困るという場合のために「サーバーにメッセージのコピーを残す」といったオプションもあった。これをオンにしておくと、あるパソコンから読み出したあとも、メールが郵便箱に残ったままになり、他の機器からも読み出せるのだ。

 今は、サーバーからメールを読み出すということもあまり意識しないかもしれない。ブラウザなどを使ってメールサーバーのメールを直接読み出すのが当たり前になったからだ。

 

メールの新しい当たり前

 ぼくがGoogleGmailを使い始めたのは日本でのサービスが始まった直後、2004年の夏だが、以来、迷惑メールに分類されたものをのぞいて、すべてのメールを受信トレイに残したままだ。メインで使っているアドレス宛のメールを転送しているだけなので、日常的にチェックすることはない。だが、今、確認したら482,101通あった。

 こうしたメールを消さない環境を新しい当たり前として提供してきたGmailがサービスインしてから16年が過ぎた。それ以前もWebメールサービスはいろいろあったが、Gmailほどのインパクトはなかったし、「捨てメアド」と言われることもあるくらいの存在感で、無償のメールサービスなんて信用ならないとまでいわれていた。

 Googleのサービスはメールサービスに加えて、カレンダーやドキュメント、スプレッドシートなどが拡充され、無償であっても信頼に足るサービスとして認知されるようになった。スマホの普及もそれに拍車をかけた。その後、Google Appsを経て有償のG Suiteとして提供されてきたが、Google Workspaceという名称で新しいスタートを切った。

 言うまでもなく組織のデジタルを丸ごと引き受けるサービスだ。新しいプランも追加されたし、Googleドライブの容量が微妙に増量されているなど実質的な値下げでもある。専任の管理者を置けないような規模の小さな組織が、すぐにデジタル移行に取り組むのにも魅力的なサービスになっている。競合とされるMicrosoft 365サービスはドメイン管理を別事業者に依存する必要があるので、ちょっと敷居が高いかもしれないが、Google Workspaceはそこも統合されている。

 ドメイン管理の関係もあって、個人と組織のデジタル化はちょっと勝手が違うが、唯一無二のパソコンにすべての情報を集約して、それがなくなったら一大事という状態からは1秒でも早く脱皮するべく、こうしたクラウドサービスを賢く活用したい。