Translate

2020/09/15

読まないメールアドレスは人に伝えるな


 メールは読まれることを前提に送られる。ところが、メールを読むかどうかは受け取り側次第であり、読むことを強制することはできない。しかも相手が読んだかどうかを知ることも難しい。

|| 多すぎたホスト

 今から30年ちょっと前の話。パソコンを公衆回線につないで通信ができるようになった当時、全国に、草の根ホストが乱立するようになった。それぞれのホストがそれぞれの個性をもち、集まっている人も違っていた。各ホストは電子掲示板や電子メールのサービスを提供し、興味のあるユーザーが、それぞれのホストに個々に接続して、そのサービスを利用してコミュニティを築いていた。
 個人運用の草の根ホストもあれば、数万人、数十万人規模の会員を抱える大規模なホストもあった。ニフティサーブなどは数百万人の会員数を誇っていたようだ。
 これらのサービスは、規模を問わず例外なく独立して運用されていた。しかも接続手段は電話回線だ。ホストごとの電話番号にダイヤルし、パソコンとホストを直結してサービスにログインする必要があった。今のように、インターネットに接続しさえすれば、どのサービスでもシームレスに接続できるという状況ではなかったのだ。
 当時は、名刺を交換すると、複数のメールアドレスを列記したものを受け取ることが少なくなかった。自分の利用しているサービスごとにメールアドレスがあるから、そうするしかなかったのだろうけど、これは送る側にもつらければ、受け取る側もつらい。
 なぜなら、名刺に印刷した以上、すべてのメールボックスを毎日確認しなければならないからだ。また、送る側にとっても、どのメールアドレスに送れば確実に読んでもらえるのか不安になる。

|| 多すぎるチャンネル

 結果として、このメールアドレスは毎日3度はチェックするが、このメールアドレスは2日おきといったことが起こり、コミュニケーションの行き違いが生じる原因になってしまう。
 今は、メールアプリが複数アカウントのメールを普通にチェックできるようになったので、メールアドレスがいくつもあっても、こうした悲劇が起こることは少なくなったが、基本的に、他人に伝えるメールアドレスは、自分の肩書きひとつあたりひとつに限定すべきだ。
 会社のメールアドレスに個人の案件を送られても困るし、個人のメールアドレスに会社の案件を送られても困る。コンプライアンス的にもまずいだろう。休日には仕事のメールは読まない、送らないという棲み分けが必要なケースもある。同じような理由で多くのビジネスマンは、業務用とプライベートの携帯電話を使い分けていたりする。
 今、30年前と同じような現象が起こっている。Twitterとインスタグラムとfacebookメッセンジャーのすべてを使っている方は少なくないと思う。それに加えてLINE、TeamsやSkype、Slackなどのチャットサービスにそれぞれのコミュニティがある。コミュニティでの活動が活発であればあるほどコンタクトもとられやすくなる。さらには音声の留守番電話-サービスにSMSと、チェックしなければならないコミュニケーションチャンネルがあまりにも多いのだ。
 今のところ、この問題を解決する手段を思いつかないのがもどかしい。